不妊治療用サプリ費用は控除対象外_東京地裁・医療費控除適用の有無で判決
東京地方裁判所はこのほど、配偶者の不妊治療のため医師の指導に基づき購入したサプリメント費用が医療費控除の対象となるか否かで争われた事案に関し、サプリメント費用は医療費控除の対象となる医療費には該当しないとして、納税者の主張を斥ける判断を示した(平成27年5月12日判決・平成25年(行ウ)第355号)。
原告である納税者の配偶者(妻)は、薬事法上の医薬品を希望しない者を対象にサプリメントで治療を施すクリニックに通院し、当該クリニックにおいて、不妊治療の一環として、医師の指導に基づきサプリメントを購入し、その購入費用を 医療費控除の対象となる医療費の額に算入して所得税の確定申告を行った。
これに対し所轄税務署長は、本件サプリメント費用は「医薬品」に該当せず、医療費控除の対象に含まれないとして更正処分等を行った。原告は、この処分を不服として訴訟に及んでいたものである。
東京地裁は、サプリメントについて、『特定の医師が服用を指導した、またはその成分が医薬品と同等であるということを理由に、治療または療養に必要な「医薬品」に類するものとして医療費控除の対象とすることは、医薬品を規制する薬事法の目的及び内容にそぐわないといわざるを得ない』とした。
その上で、『「医師又は歯科医師による診療または治療」の対価とは、医師等が行う診療行為又は治療行為の対価をいうもので、これらの診療行為等とは別に、患者が疾病の治療のために購入するサプリメントの対価は含まれないと解すべきである。本件サプリメントが不妊治療の一環として購入されたものであったとしても、その購入費用は「医師又は歯科医師による診療または治療」の対価には当たらない』との判断を示している。
本件は、あくまでサプリメントの購入費用を巡る争いであり、医師による不妊治療の費用については、医療費控除の適用が認められている。
なお、原告は今回の判決を不服として、東京高裁に控訴している。