名義預金・名義株式
相続財産の漏れとは
国税庁が発表した相続税の税務調査実績によると、その85%から申告漏れが発見されている。申告漏れのうち最も多いのが、現金預金で33%を占めている。納税者はそんなに現金預金を隠しているものなのか。
申告漏れで最も指摘が多いのが家族名義の預金を除外しているケース。名義預金とは名義人と実質所有者が異なる預金のこと。配偶者や子ども、孫などの名義で預金していても、実質は亡くなった被相続人のものとされ、これが相続税の対象とされる。申告漏れとされているものの多くはこの名義預金である。
本当に相続人独自の預金なのか?
税務署は預金の名義に関係なく、預金を誰が管理・運用していたかという事実で相続財産か否かを判断する。①預金の管理・運用をしていたのは誰か、②銀行の届出印は名義人がいつも利用している印鑑か、③贈与された預金では、名義人は贈与された事実を知っていたか、④過去に贈与税の申告はなされているか、等により名義人の預金かを判断される。
税務署は相続人の持っている預金をすべてチェックする。相続人が持っていると予想される金融機関には10年くらいまでは出し入れをチェックされると思っていてよい。
贈与された事実とは
過去に110万円の範囲内なら贈与税はかからないので、毎年子どもに黙って贈与をして預金して、現在は千万円を超える残高になっているケース。もらった子どもは知らされていない。もう子ども名義だから相続財産にはならないと安心してはいけない。
贈与契約は双務契約。贈与者と受贈者が両者で契約していないと成立しない。民法上は口頭の贈与契約は何時でも取り消すことができるので、贈与の証明はなかなかむずかしい。被相続人のものとされると、預金口座そのものが相続財産に取り込まれることになる。贈与は書面で残しておいた方が無難だ。
相続が発生する前に対応しておこう。
名義株式はもっと恐い!
自社株を20年前に贈与した配偶者に贈与。株主名簿には妻の名前が掲載されている。配当も妻にした。しかし、配当金の支払いは社長である夫の役員報酬と同じ口座。会社も妻も株主であるという認識はないから、株主総会の招集通知も出していない。
社長はもう名義が妻名義になっているから相続財産にはならないと思っている。しかし、税務署は自社株の実質所有者は社長と認定する。
生前からなにか対応策を立てておくことをお勧めする。